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居室 / Office & Rest space

当グループの研究居室は分子科学研究所研究棟の3F東フロア一体です。メンバー間の活発なディスカッションやコミュニケーションを促進するため、部屋の仕切りやデスク間のパーティションを極力排除しています。また、個人使用に幅の広いデスクや棚を整備しています。長時間のデスクワークによる研究の質の低下や腰痛を防止するために、スタンディングデスク数台を共用で導入しています。

憩いのスペースも充実していて、最先端の物理学・物理化学・表面科学研究にじっくりクリエイティブに取り組める贅沢な居室環境を整えています。

私たちは、物理学の基礎に立ち返ってレーザー光による分光法・光学を原理のレベルから深く掘り下げながら、従来法の限界を突破した新しい表面界面分光観測法の開発とそれらを駆使した発展的な研究展開に注力しています。

下記に紹介する光源や実験設備がそうした研究活動を下支えしています。

高出力KHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Tiサファイアレーザー 初号機]

Spitfire Ace PA (Spectra Physics社製)
(800nm, 35fs, 5kHz, 16W出力)

 本レーザー光源は、35fsという短い時間幅で3.2mJ(@5KHz)もの高エネルギーパルスを出力する点に大きな特色があり、mJクラスの極めて高いパルスエネルギーが必要な非線形波長変換技術を駆使した次世代的な分光研究展開も可能にしています。国内外で販売されている同型フェムト秒チタンサファイアレーザー光源の中で最高レベルの16Wの平均出力強度を有する2段アンプ式のレーザー光源です。(国内主流の同型Tiサファイアレーザーの出力は標準的には1~3W程度)
 この卓越した出力強度により、レーザー光を複数に分岐することで種々の非線型次数の多光子コヒーレント分子分光法を自在に駆使し、かつ複数の異なる非線形分光計測を同時に行うことも可能となっています。出力安定性(実験環境の温度変化に対する安定性)も従来の同系チタンサファイアレーザーに比して抜群に向上しており、微弱信号検出や高難度計測の実現・開拓に大きく貢献しています。

KHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Tiサファイアレーザー 零号機(旧モデル)]

Spitfire Pro (Spectra Physics社製)
(800nm, 150fs, 1kHz, 1W出力)

 本レーザー光源は、2000年前後に端を発するフェムト秒超短パルス分光イノベーションを支えた代表的なTiサファイアフェムト秒レーザーであり、過渡吸収分光法や二次非線形分光等の標準的なパルスレーザー分光計測が可能な光源です。
 一方で、この20数年間のレーザー技術の発展は目覚ましく、①Tiサファイアレーザーとしての数世代にわたる進化(Spitfire Pro → Spitfire Ace → Spitfire Ace PA)や、②高出力・高繰返・短パルスのスペックを有する次世代Ybレーザー光源の台頭、によりあらゆる基本スペックで最新機とは大きく差が開いている旧式光源です。
 そこで当研究室では、新入生やインターンシップ生に対するレーザー教育/トレーニング用途のみで本レーザ-光源を運用することにしています。

高出力MHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Ybレーザー 初号機]

CARBIDE60 (Light Conversion社製)
(1030nm, 190fs, 最大2MHz, 60 W出力)

 本レーザー光源は、60Wという高い平均出力を誇り最大で2MHzの高繰り返し発信が可能な新世代型ハイスペックYbレーザー光源です(現在主流の同型Ybレーザーの標準的な出力は概ね6W程度)。この卓越したの出力強度により、レーザー光を複数に分岐することで種々の非線型次数の先進的な多光子コヒーレント分子分光法を自在に駆使することが可能となっています。特に、1MHz発振においも1パルスあたり60μJもの強度を有しているため、より高次の高難度非線形分光計測をMHzオーダーで非破壊的かつ高感度に実施することも可能となっています。
 産業利用に耐える卓越した出力安定性(実験環境の温度変化に対する優れた安定性を含む)を有していることも重要な特徴の一つで、微弱信号検出や高難度計測の実現・開拓に大きく貢献しています。

高出力MHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Ybレーザー 弐号機]

Monaco40-LevanteIR・DFG (Coherent,APE社製)
(1035nm, 300fs, 最大50MHz, 40W出力)

 本レーザー光源(Monaco)は、40Wという高い平均出力を誇り最大で50MHzの高繰り返し発信が可能なハイスペックYbレーザー光源です。1MHz発振においも40μJものパルスエネルギーを有しているため、光パラメトリック発振器(OPA)と組み合わせて伝搬光(遠隔場)による高難度な界面非線形分光計測を実施することも可能です。
 また、50MHzという高繰返し発信においても1パルスあたり1μJ程度のパルスエネルギーを有しているため、光パラメトリック発振器(OPO; Levante-IR・DFG)を用いて数Wオーダーの高出力な赤外パルスを近赤外~遠赤外領域において波長可変で発進させることが可能です。この高い赤外出力においても1パルスあたりのエネルギーは10nJオーダーであるため、強い吸収がある物質・分子系に対しては強度を微調整することで種々の非線形分光計測を非破壊かつ高感度に実施することが可能になっています。特に、古典的あるいは量子的なプラズモニクス&フォトニクスに立脚した『ナノスケール&オングストロームスケールの近接場極微非線形分光計測』という高難易度な界面分子計測法の開発への重要な貢献があります。近接場と遠隔場の両方の先進的な多光子コヒーレント分子分光法を自在に駆使することが可能となっています。
 産業利用に耐える卓越した出力安定性(実験環境の温度変化に対する優れた安定性を含む)を有していることも重要な特徴の一つで、微弱信号検出や高難度計測の実現・開拓に大きく貢献しています。

高出力MHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Ybレーザー 参号機]

Tangerine HP2 SP (Amplitude社製)
(1030nm, 130fs, 最大40MHz, 50W出力)

 本レーザー光源は、50Wもの高い平均出力を最大で40MHzの高繰返しで発信することが可能な新世代型ハイスペックYbレーザー光源です。卓越したの出力強度により、レーザー光を複数に分岐することで種々の非線型次数の先進的な多光子コヒーレント分子分光法を自在に駆使することが可能となっています。1MHz発振においも1パルスあたり50μJもの強度を有しているため、より高次の高難度非線形分光計測をMHzオーダーで非破壊的かつ高感度に実施することが可能となっています。特に、高出力MHz-Ybレーザーとしては希少な130fsの短パルス時間幅を有しているため、パルス圧縮技術を用いることで高出力を維持した状態で一桁程度短い時間幅を持つパルス光を準備することも比較的容易になっており、時間領域分光スキームとエネルギー領域分光スキームをより先進的に高度融合させることにも重要な貢献があります。
 また、40MHzという高繰返し発信においても1パルスあたり1μJ程度のパルスエネルギーを有しているため、種々の高度な非線形分光法を光学顕微計測や近接場極微計測に発展させることも可能としています。
 産業利用に耐える卓越した出力安定性(実験環境の温度変化に対する優れた安定性を含む)を有していることも重要な特徴の一つで、微弱信号検出や高難度計測の実現・開拓に大きく貢献しています。

高出力MHzフェムト秒パルスレーザー光源 [Ybレーザー 四号機]

CARBIDE80 (Light Conversion社製)
(1030nm, 180fs以下, 2MHz, 80W)

 高出力MHzフェムト秒パルスレーザー光源[Ybレーザー 初号機, CARBIDE60]と類似のスペックを有していますが、こちらは更に平均出力が20W強力な2023年度最新モデルです。2台のMHz高繰り返し波長可変OPAと共に運用し、複数の高難度高次非線形分光計測を同一試料・同一条件に対して展開可能です。未踏の複雑・複合物質界面系に対する非破壊的かつ高感度なマルチモーダル分子分光計測を世界に先駆けて展開し、界面分子科学の次世代的学術領域を開拓・構築していきます。

MHzピコ秒パルスレーザー光源 [Nd:YVO4レーザー 初号機]

PT257 (EKSPLA社製)
(1064nm, 7ps, 88MHz, 6W出力)

 本レーザー光源(PT257)は基本波(1064nm)を6Wの平均出力で、倍波(532nm)の光を3Wでそれぞれ88MHzの高繰り返しで発信が可能なNd:YVO4レーザー光源です。光パラメトリック発振器(OPO)も内蔵されているため、波長可変で可視~近赤外領域(690-990nm, 1150-2300nm)のピコ秒パルスを出力することも可能です。高繰り返し発振のため1パルスあたりのエネルギーが数10nJオーダーであり、ターゲット試料の非線形光学応答を非破壊的かつ高感度に観測することが可能になっています。運用しやすいコンパクト設計でありながら優秀なレーザー光源です。

超高真空well-defined表面分子分光装置

 超高真空という不純物の存在がない理想環境下におけるwell-definedモデル表面状の水分子集合体や物理吸着水素を対象とし、表面科学・分子科学のフロンティアを開拓します。SpitfireAce PAをベースとしたハイスペックのフェムト秒レーザーシステムにより、マルチプレックス型の和周波発生(SFG)分光をはじめとする広帯域なコヒーレント非線形分光法や、赤外・可視吸収分光、テラヘルツ分光法、多次元分光法などを用いた研究が可能です。
 また、これらのレーザー分光との同時計測でFT-IRによる幅広い波数領域の振動分光やMCP-LEEDを用いた表面二次元系の構造解析,更には分子の吸着エネルギーを直接評価可能な昇温脱離法も可能です。このように、独自のノウハウを元に『種々の先端計測を自在に駆使』して多角的・先進的な研究展開が可能な世界で唯一の表面分光装置です。従来のアプローチでは観測できなかった表面分子系の観測に挑戦しています。

極低温・超高真空走査プローブ顕微鏡(STM/AFM/NL-SNOM)

 極低温・超高真空という極限的環境下におけるwell-definedモデル表面状の分子集合体や水分子の極微計測により、表面科学・分子科学のフロンティアを開拓しています。卓越したMHzパルスレーザーシステムとSTM・AFMの融合により、ナノフォトニクスの遥か先を行く『オングストロームスケールの極微フォトニクス』に基づく革新的な非線形分子分光計測手法の開発にも世界に先駆けて挑戦しています。

極低温・超高真空表面分子分光装置

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紛体触媒のオペランド表面分光計測装置(定常光照射) [初号機]

 実反応条件下での触媒表面科学・分子科学を開拓します。準定常的に誘起する触媒反応の効率(反応活性)や選択性を評価し、かつ同時に触媒の状態や表面の反応活性分子・反応中間体・反応生成分子を連続光源(CW光)をベースとして分光検出します。微粒子試料による光触媒反応、光電気化学反応、熱触媒反応などが主な研究対象です。
 特に、現在は酸化物半導体微粒子をターゲットとした水分解光触媒反応やメタン改質光触媒反応についての研究に注力しており、独自の研究ノウハウを元に反応活性の飛躍的向上や反応選択性の制御に資する本質的な知見を得ることに貢献している装置です。

紛体触媒のオペランド表面分光計測装置(定常光照射) [弐号機]

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 オペランド表面分光計測装置(定常光照射) [初号機]と共に、酸化物半導体微粒子をターゲットとした水分解光触媒反応やメタン改質光触媒反応系への研究展開に注力しており、独自の研究ノウハウを元に反応活性の飛躍的向上や反応選択性の制御に資する本質的な知見を得ることに貢献している装置です。

紛体触媒のオペランド表面分光計測装置(定常光照射) [参号機]

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紛体触媒のオペランド表面分光装置(パルスレーザー光照射)

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 実反応条件下での触媒表面科学・分子科学を開拓します。フェムト秒レーザーシステムによる時間分解赤外・可視吸収分光法や多次元分光法、コヒーレント非線形振動分光法などを駆使し、触媒反応(電荷・熱キャリア&表面活性種・反応中間体)のダイナミクスや微視的メカニズムを解明します。独自の装置構築ノウハウにより、触媒の活性や選択性の評価と同時に先端的な分光計測が可能になっており、反応条件下の触媒微粒子の表面過程に“真に迫る“ことが可能な世界的に数少ない表面分光装置です。反応活性の飛躍的向上や反応選択性の制御に“真に資する“本質的な知見を得る表面分光に挑戦しています。

ナノ物性計測in-situ走査型プローブ顕微鏡 [共同利用]

 ブルカー社の『Dimension icon XR Nano Electrical AFM』をベースとして、特に、電場・磁場の印加や光照射下で動作する各種エレクトロニクス・スピントロニクス・フォトニクス素子等のin-situ観測を得意とする先端的なAFM装置です。所謂タッピングモードやコンタクトモードといった標準的なAFM計測に加え、ピークフォースタッピングモードAFM機能により、試料表面の鮮明な原子分解能像を簡便かつ非破壊的に取得することが可能です。また、探針と試料の間に流れる100fAオーダーの極微少電流の検知も可能であり、導電性が低い材料に対してもI-Vカーブを高感度に測定し、局所導電特性のマッピングが可能です。
 それ以外にも、表面電位や電気力、磁気力等のマッピングやSTMモードでの測定機能も備わっています。さらに、湿度やガスの組成といった計測雰囲気の制御や試料の温度制御(-35℃~250℃)が可能であり、独自の密閉型セルを用いることにより大気非曝露下での測定が可能であるなど、様々な環境下で試料表面の計測が可能となっている先進的なAFM装置です。
 所内外の皆様に幅広くご使用いただける分子研の共同利用機器です(ナノプラットフォームや協力研究の制度を是非ご活用ください)。

ナノ電気化学・生命科学in-situ走査型プローブ顕微鏡 [共同利用]

 こちらの装置は、上記のAFM装置と対を成すもので、ブルカー社の『Dimension icon XR Nano ElectroChemical AFM』をベースとしています.特に、反応進行中の触媒表面や動作中の電池等の電気化学的固液界面のオペランド観測を可能とする点に大きな特徴がある先端的AFMです(上記のNano Electrical AFMと共通した測定機能も当然ながら複数備えています)。
 様々な揮発性溶媒中の試料に対して電気化学条件下で各種AFM測定を行うことや、電気化学条件下で試料を最大60℃まで加熱したり溶液の還流を行いながらAFM測定することも可能です。特殊設計の専用探針を用いることで、溶液中の固体材料・電極触媒・酵素などの試料に対する種々の電気化学特性も局所計測・マッピングすることが可能となっています。
 所内外の皆様に幅広くご使用いただける分子研の共同利用機器です(ナノプラットフォームや協力研究の制度を是非ご活用ください)。