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2021年9月末に行われた大学院入試を経て、2022年度4月から3名の学生さんが大学院生として当研究室の新メンバーとなります。
今回は、彼らが当研究室を選択するに至ったモチベーションなどについて、これまでの興味やこれから挑戦したいこと、意気込みなどを共有してもらいました。大学院入試合格・進学予定者の声
S.K.さん | 筑波大学理工学群4年生
私は、現代の石油資源依存社会が直面しているエネルギーに関する諸問題の根本的な解決手法として、水素社会の実現を極めて重要な社会課題として捉えています。そのためには水電解技術や燃料電池による発電技術の飛躍的な高効率化が必要不可欠であると考えています。
そこで私は、所属大学の研究体験プログラムを通じて大学の一年次から燃料電池の正極反応である酸素還元反応のメカニズム解明に関わる理学研究に取り組んできました。その経験から、電気化学技術にてブレイクスルーを目指す為には、電極表面における物理化学現象や反応メカニズムの解明と、それに基づく新たな表面設計指針を構築することが重要であると感じてきました。
大学2年から4年にかけて分子科学研究所でのオープンキャンパスや体験入学に複数回参加し、非線形分光に関する研究取り組みを知り、学びを深める機会がありました。それにより、非線形分光を用いた電気化学界面の先端的な物理化学研究によって、実践的なバルク電極や粉触媒における電気化学反応のメカニズムや界面水の反応性に関する微視的知見を得ることが可能になると感じ、自分の研究の方向性に大きな希望を持ちました。
杉本研究室は非常に若い研究室ながら最先端のレーザー設備や原子・分子レベル計測装置が次々と導入されていて、非常に勢いを感じます。そうした中で、私は大学院においては杉本研究室で先端的な分光装置の立ち上げや電気化学研究への非線形分光法の高度な応用を目指したいと考えています。これを元に、固液界面における基礎的な物理現象の解明や実践的な電気化学反応のメカニズム解明を行いながら、高活性な電極触媒の合成にチャレンジしたいと考えています。また、非線形分光を用いた電気化学界面研究の波及効果として、生体分子や生体膜表面における反応ダイナミクスの解明も目指してみたいと考えています。
こうした方向性で研究キャリアを実現するためには、様々な非線形光学過程を引き起こせる高出力なレーザー装置や、様々な分析手法や工作が実施できる環境が望ましいと考えています。分子科学研究所ではそうした環境が整っていると感じ、杉本研究室で最先端のレーザー分光手法に根差した表面界面研究を深めるべく志望しました。
R.Y.さん | 京都大学理学部理学科4年生
私は固体の光物性に関心があり、2020年度の12月と3月にインターンシップに参加しました。そこで物質表面の光物性という次世代の物質研究テーマと出会い、それに対するアプローチとしての非線形光学のレクチャーや最先端の非線形分光実験を体験することで、その新規性と将来性に魅力を感じ、こうした分野で研究を発展させていきたいと、強く感じました。特に、非線形分光を用いた物質の表面・界面計測システムに非常に興味を持っております。卒業研究として取り組む高次高調波発生を通じて学んだ実験技術と理論を応用し、大学院では物質の物性や機能を理解していく分光研究につなげていきたいと思っています。
大学院では、特に、波長変換や光発生を担う次世代非線形光学素子の開発につながる物質界面接合技術の開発研究にも取り組みたいと考えています。半導体レーザー技術において革命的素子となり得る物質と物質の接合状態を非線形分光法で微視的に観察し、接合界面を評価する研究に興味があります。物質の表面を操作し、接合界面を観測しながら接合の物理を作り上げる、という杉本研究室の新たなチャレンジに私も参加して学び、飛躍したいと思い進学を志望しました。
分子科学研究所の環境は、様々な分野のトップレベルの研究者の方々が集まっている他、最先端の実験装置群が充実しているという点で非常に魅力的に感じています。将来的に研究者として高いレベルを目指す上で、研究活動に十分に没頭できるこうした新しい環境に飛び込み、研鑽を積みながら有意義な大学院生活を送りたいと思っております。
T.M.さん | 広島大学大学院先進理工系科学研究科 修士課程2年生
私は化学反応に興味を持っていて、大学で気相のイオン-分子反応の研究に関わる中で、より複雑でリアルな凝縮相や界面での化学反応や、その複雑な系をいかにして単純化して理解するかという点に興味を持ちました。特に、不均一触媒などで見られる界面での化学反応を解明したい、さらに、界面制御で分子が感じるポテンシャルエネルギーに変調を加えることで、より良い反応条件を探索したいという思いがあります。
私が界面に特に興味がある理由としては、工業応用的に効率的な不均一触媒が期待されているという点が挙げられます。 光エネルギーを用いた光触媒における水素合成や選択的な炭化水素反応など、高い利用価値が期待される界面反応の研究ですが、界面の原子は露出した面に依存して反応性が大きく変わる、という複雑性があります。さらに、条件制御の難しさだけではなく、バルクに比べ、測定対象となる分子、原子数が少ないという測定の難しさも持ちます。 効率的な材料表面の探求の段階さえ未開拓領域が極めて広い研究分野だと感じています。
2020年度から2021年度にかけての複数回の体験入学を通して、非線形光学を利用した界面敏感な検出法を詳細に学びました。また、杉本研究室では、界面の化学反応を追求する上で自分が挑戦したいと以前から思っていた「触媒などの界面分子の配向を調べる、ポテンシャルに変調を加えるという課題」に対して、フェムト秒レーザーを用いた様々な分光法やSTM・ナノフォトニクスを組み合わせた新展開を構想している事を知りました。さらに、そこで得られた表面科学的知見を活用して光触媒の材料開発研究までを網羅していることを知り、今の気相の研究分野を飛び出して表面・界面科学を基礎から実践的に学ぶ環境として最適だと感じ、進学を決意しました。
さらに、研究する環境として、研究に集中できる点や隣の研究室との距離が近く共同研究もしやすい点から分子科学研究所は優れていると思いました。 UVSORという放射光施設もあり、入学後には非線形分光と放射光を組み合わせた研究にも興味があります。 先端的な光学系の構築や装置・要素技術の開発から取り組み、詳細に表面・界面化学反応を理解する研究を実施していきたいと考えています。
あなたの視野を大きく広げ飛躍させる有意義な3日間!